エンジニア採用を成功させる6つの戦略!最新データと採用事例から学ぶ
2025.7.14

DXの推進やIT技術の急速な発展により、多くの企業でエンジニア採用の重要性が高まっています。しかし、IT人材不足が深刻化する中で、優秀なエンジニアの採用は年々難しくなっています。「求人を出しても応募が集まらない」「内定を出しても辞退される」「採用できても早期に退職してしまう」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
この記事では、最新の市場データからエンジニア採用の現状と課題を分析し、採用が難しい理由を明らかにします。また、効果的な採用手法の比較や具体的な成功戦略、実際の成功事例を紹介し、エンジニア採用に苦戦している企業が明日から実践できる施策をご提案します。
エンジニア採用市場の現状と課題

まずは、エンジニア採用市場の現状と課題について、最新データをもとに見ていきましょう。
IT人材不足の実態~2030年には最大79万人不足の予測
経済産業省が公表している「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で79万人ものIT人材が不足すると予測されています。この数字は、デジタル化の加速やAI、IoTといった技術の普及に伴い、今後もIT人材への需要が高まり続けることを示しています。
IT技術は、もはやIT業界だけでなく、製造業、金融業、小売業など、あらゆる産業においても必要不可欠なものとなっています。そのため、業種を問わずIT人材の獲得競争が激化しています。
参考:経済産業省| IT人材需給に関する調査エンジニア有効求人倍率の推移とその影響
厚生労働省の2025年3月の調査によると、エンジニア(情報処理・通信技術者)の有効求人倍率は1.59倍、新規求人倍率は3.54倍と高い水準にあります。これは全職種平均の有効求人倍率1.28倍、新規求人倍率2.38倍と比較しても高い数字です。
特に、IT業界のエンジニア求人倍率は12.0倍(2023年12月時点)と極めて高く、企業間の人材獲得競争は、かつてないほど激化しています。この影響もあり、エンジニアの採用単価は上昇傾向にあり、企業の採用コスト負担が増えています。
参考:厚生労働省|一般職業紹介状況エンジニアの転職動向と志向性の変化
20代~30代のエンジニアは、自身の市場価値を高めるためのスキルアップ志向が強く、技術的な挑戦ができる環境や最新技術に触れられる環境を重視する傾向があります。また、リモートワークなど柔軟な働き方を求める声も増えています。
エンジニア採用が難しい6つの理由

なぜエンジニア採用は難しいのでしょうか?主な理由として以下の6つが挙げられます。
市場全体のエンジニア不足と競争激化
前述のとおり、IT人材は2030年に最大79万人不足すると予測されており、これは市場全体でエンジニアが不足していることを示しています。DXの推進やAI技術の浸透によって、IT業界だけでなく、あらゆる業界でエンジニア人材の需要が高まっています。
さらに、経験者採用に集中する傾向が強まり、特に20代後半~30代前半の経験者エンジニアの獲得競争は極めて激しい状況です。多くの企業が同じターゲット層を狙っているため、採用難易度が上がっています。
企業が求める条件と求職者が求める条件のミスマッチ
企業側がエンジニアに求めるスキルや経験と、エンジニア側が企業に求める条件(給与、環境、成長機会など)の間にミスマッチが生じていることも課題となっています。
特に中小企業では、高いスキルを持つエンジニアを採用したいものの、大手企業と同等の待遇を提供できないケースが多く見られます。また、企業側が採用市場の実態を把握しきれておらず、現実とのギャップが生じているケースも少なくありません。
フリーランスや副業など働き方の多様化
政府による働き方改革の推進や多様な働き方への価値観の変化により、企業に所属するだけでなく、フリーランスとして活動するエンジニアが増えています。また、「副業OK」の企業も増加し、技術力の高いエンジニアは本業とは別に副業で収入を得るケースも増えています。
こうした環境変化により、従来のように「転職」というステップを踏まなくても、エンジニアが自身のキャリアや収入を拡大できる選択肢が広がった結果、転職市場におけるエンジニア人材の流動性に影響を与えています。
エンジニアのスキル・適性を見極める難しさ
技術職であるエンジニアのスキルを評価することは、一般的な職種よりも専門性が高く、難しい面があります。特に人事担当者がIT技術に詳しくない場合、応募者のスキルを正確に評価できないことがあります。
また、プログラミングスキルだけでなく、コミュニケーション能力やチームでの協働性など、人間力も含めた総合的な評価が必要なため、採用における見極めが難しくなっています。
採用手法・チャネルの多様化と複雑化
従来の「求人メディア」「人材紹介」だけでなく、ダイレクトリクルーティング、SNSを活用した採用広報、リファラル採用など、採用手法が多様化しています。これはインターネットやSNSの発達によって、求職者の情報入手経路も変化したことに起因しています。
多様な採用チャネルを管理し、それぞれで効果的な施策を展開するには、専門知識やリソースが必要となるため、特に採用部門の体制が十分でない企業にとっては難易度が上がっています。
優秀なエンジニアの流動性の低さ
企業がエンジニア不足に悩む中、各社は自社の優秀なエンジニアを流出させないように、処遇や労働環境の改善に力を入れています。そのため、優秀なエンジニアほど現職に満足し、転職市場に出てこない傾向が強まっています。
結果として、転職市場に出るエンジニアの数が限られ、さらに採用難易度が上がるという悪循環が生じています。
エンジニア採用の効果的な手法比較
エンジニア採用においては、様々な手法を状況に応じて使い分けることが重要です。以下に主な採用手法とそれぞれの特徴をご紹介します。
手法 | メリット | デメリット | 向いている企業 |
---|---|---|---|
求人サイト・転職媒体 |
・幅広い層にリーチできる |
・競合他社の求人と比較されやすい |
・ある程度の知名度がある企業 |
転職エージェント |
・条件に合った人材を紹介してもらえる |
・採用した場合のコストが高い |
・採用予算に余裕がある企業 |
ダイレクトリクルーティング |
・ターゲットを絞ったアプローチが可能 |
・運用工数が多くかかる |
・採用担当者のリソースに余裕がある企業 |
リファラル採用 |
・採用コストを抑えられる |
・社員の人脈に依存する |
・社内の従業員満足度が高い企業 |
SNS・オウンドメディア |
・自社の魅力を直接伝えられる |
・効果が出るまで時間がかかる |
・長期的な採用戦略を持つ企業 |
エンジニア採用を成功させる6つの戦略

ここからは、エンジニア採用を成功させるための具体的な6つの戦略を紹介します。
採用ターゲットの明確化と採用基準の適正化
エンジニア採用の第一歩は、自社が求める人材像を明確にすることです。しかし、理想的な人材像を求めすぎると、現実の市場状況とのギャップが生じる恐れがあります。
効果的なアプローチとしては、「必須条件」と「歓迎条件」を明確に分け、必須条件は最低限に絞ることです。また、年齢や経験年数にこだわりすぎず、スキルや将来性を重視することで、採用の可能性を広げられます。
特に30代後半以上のエンジニアや、異業種からの転向者など、従来のターゲット層から外れる人材にも視野を広げることで、優秀な人材との出会いの機会が増えます。
エンジニアが魅力を感じる求人原稿の作り方
エンジニアが求人に魅力を感じるポイントは、具体的な開発環境や技術スタック、プロジェクト内容、そして成長機会です。これらの情報を詳細かつ具体的に記載することが重要です。
例えば、使用言語やフレームワーク、開発手法(アジャイルなど)、チーム構成、今後のキャリアパスなど、エンジニアが知りたい情報を盛り込みましょう。また、リモートワークやフレックスタイム制など、働き方の柔軟性も重要なアピールポイントとなります。
実際の開発事例や、現在のチームメンバーのバックグラウンドを紹介することで、より具体的な入社後のイメージを伝えることができます。
選考プロセスの効率化とスピード強化
優秀なエンジニアは複数の企業から内定を得ている場合が多く、選考プロセスのスピードが採用成否を分ける重要な要素となります。
特に書類選考については、「会いたい人を選ぶ」のではなく「会う必要がない人を除外する」スタンスで臨むことをおすすめします。経歴書の情報だけでは判断しきれない部分も多いため、可能性のある方とはまず面談の機会を持つことが重要です。
技術力と人間力を適切に評価する面接設計
エンジニアの面接では、技術力の評価と人間力(コミュニケーション能力、チームでの協働性など)の評価をバランスよく行うことが重要です。
技術力の評価については、実務に即した技術質問や小規模な課題を用意し、現場のエンジニアが評価することが効果的です。ただし、難易度が高すぎる課題や、実務と関係のない知識を問う質問は避けるべきでしょう。
また、「この技術をどう活用したか」「課題をどのように解決したか」など、思考プロセスや問題解決能力を評価する質問も有効です。さらに、チームでの働き方や、コミュニケーションスタイルについても確認し、自社の文化との適合性を見極めましょう。
内定者フォローと辞退防止策の強化
内定を出した後も、他社との競合は続いています。内定者とのコミュニケーションを密に取り、不安や疑問を解消していくことが重要です。
効果的な内定者フォローとしては、内定者専用のコミュニケーションチャネル(SlackやLINEグループなど)の設置、現場エンジニアとの交流会、入社後のプロジェクトや業務に関する詳細な情報提供などが挙げられます。
また、入社への障壁となる懸念事項(給与、勤務条件など)があれば、可能な範囲で柔軟に対応することも、内定承諾率を高める上で重要です。
エンジニアの定着率を高める組織づくり
採用活動の成功は、入社後のエンジニアの定着があってこそ意味を持ちます。エンジニアの定着率を高めるには、技術的成長を促す環境づくりが欠かせません。
具体的には、最新技術への挑戦機会の提供、社内外の勉強会・セミナーへの参加支援、技術書籍の購入補助など、学習環境の整備が効果的です。また、テックリード、アーキテクト、マネージャーなど、多様なキャリアパスを提示することも重要です。
さらに、リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方の導入、技術力に応じた適切な評価・報酬制度の整備なども、エンジニアの定着に寄与します。
これからのエンジニア採用に向けた準備と提言

最後に、今後のエンジニア採用に向けた準備と提言をお伝えします。
今後のIT人材市場の動向予測
IT人材市場は今後も売り手市場が続く見通しです。特にAI/機械学習、クラウド、セキュリティなどの先端技術分野のエンジニアの需要は一層高まるでしょう。また、DXの推進により、従来IT業界ではなかった業界でもエンジニア採用の需要が増していくことが予想されます。
働き方においても、リモートワークの定着やフリーランス・副業の普及がさらに進み、エンジニアのキャリア選択の多様化が進むでしょう。こうした変化を理解し、柔軟に対応していくことが重要です。
自社のエンジニア採用戦略を見直すポイント
自社のエンジニア採用戦略を見直す際のポイントとしては、以下の点に注目しましょう。
- 採用ターゲットの再定義:現実的な採用ターゲットを設定し、年齢や経験にこだわりすぎない柔軟な基準を検討
- 複数の採用チャネルの活用:求人媒体、エージェント、ダイレクトリクルーティング、リファラルなどを組み合わせる
- 選考プロセスの効率化:迅速な書類選考、面接日程調整の柔軟化、結果連絡の迅速化
- 内定者フォローの強化:定期的なコミュニケーション、現場社員との交流機会の設定
- 環境・制度の見直し:リモートワーク制度、技術的成長を促す制度、評価・報酬制度の再検討
採用だけでなく育成も視野に入れた長期的視点
エンジニア不足が続く中、経験者採用だけでは人材確保が困難な状況は今後も続くでしょう。そこで重要になるのが、未経験者の採用と育成を視野に入れた長期的な人材戦略です。
新卒採用やポテンシャル採用を強化し、社内での育成体制を整えることで、自社に合ったエンジニアを育てるという視点も重要です。また、既存社員のスキルアップ支援や、社内での職種転換制度の導入も検討する価値があります。
さらに、業務委託やパートナー企業との協業など、採用以外の選択肢も含めた柔軟な人材戦略を構築することで、企業の成長に必要なエンジニアリングリソースを確保していくことが大切です。
まとめ
エンジニア採用は年々難易度が上がっていますが、採用市場の現状を理解し、適切な戦略を立てることで成功に近づくことができます。
採用活動は「企業が人を選ぶ」ではなく「企業が選ばれる」時代であることを意識し、エンジニアにとって魅力的な環境づくりと、それを効果的に伝えるコミュニケーションを心がけることが大切です。
本記事がエンジニア採用に取り組む皆様のお役に立てれば幸いです。貴社のエンジニア採用が成功し、ビジネスの成長につながることを願っています。