働き方改革とは?実現に向けて”企業が取り組むべきこと”やメリットをわかりやすく解説
2024.4.25
働き方改革とは、厚生労働省によると、『働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革』と定義しています。
企業が働き方改革を取り入れることで優秀な人材の採用、生産性の向上、長時間労働の是正といった企業側も労働者側も多くのメリットを得ることができます。一方で働き方改革を実現するための具体的な施策が分からない、取り組みはいくつか行っているものの効果がない、職場に定着していないといった悩みを持つ方もいるかもしれません。
今回の記事では、働き方改革の実現に向けて取り組むべき具体的なことやメリットを解説します。
目次
働き方改革の概要と目的
働き方改革は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」として2018年7月6日に公布され、日本が直面している以下のような課題の解決を目的に推進されています。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 長時間労働の慢性化
- 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差
- 有給取得率の低迷
- 育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化
- 企業におけるダイバーシティの実現の必要性
課題解決のために、厚生労働省でも以下のような取り組みを行っています。
- 長時間労働の是正
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
- ダイバーシティの推進
- 賃金引き上げ、労働生産性向上
- 再就職支援、人材育成
- ハラスメント防止対策 など
国だけでなく、各企業が働き方改革の取り組みを推進することで実現します。
ところが、働き方改革に向けた施策を行うことは、企業に大きな負担となります。たとえば柔軟な働き方ができる環境整備のためには、テレワークの機器や設備の導入、労働規定の改訂などが必要です。
働き方改革が普及した背景
働き方改革が普及した背景には、以下の労働者側・企業側それぞれの社会的な要因があります。
労働者側の要因
- 少子高齢化による生産年齢人口の減少
- 育児や介護との両立など働き方のニーズの多様化
企業側の要因
- 労働者のライフワークバランスの重視
- 効率的な業務遂行の追求
- テクノロジーの進化による柔軟な働き方の可能性の拡大
これらの複合的な社会的要因を解決するには、従来の働き方そのものを見直す必要があります。そのために、「働き方改革」が求められるようになりました。
働き方改革に関する社会・政府(政治)の動き
働き方改革に関する社会・政治の動きを以下にまとめました。
年代 | 社会の動き | 法律・政治の動き |
---|---|---|
1980年代後半 |
過労死の認知度が上がる |
|
1990年代前半 |
バブル崩壊 |
労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法制定 |
1990年代後半 |
生産年齢人口(15~65歳未満)の減少開始 |
少子化対策推進基本方針策定 |
2000年代前半 |
インターネットやクラウドの普及 |
働き方改革推進 |
2000年代後半 |
第二新卒ブーム |
労働時間等の設定の改善に関する特別措置改正 |
2010年代前半 |
ブラック企業が新語にノミネート |
過労死等防止対策推進法制定 |
2010年代後半 |
人生100年時代の到来 |
日本再興戦略2016発足 |
2020年代 |
時間外労働上限規定(中小企業) |
特にIT業界の働き方改革が急務とされている
働き方改革のなかでも、特に急務とされているのがIT業界の働き方改革です。
厚生労働省でも、「IT業界における働き方改革-ワーク・エンゲージメントと創造的協働を高める 10 の提言-」を提唱し、推進しています。
日本社会のデジタル化が進むなか、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や政府のデジタル政策が急速に展開されています。その結果、デジタル社会の実現に必須となるIT業界の従事者の深刻な人手不足が発生しています。
特にIT業界では企業のDXを推進するための専門的な技術やスキルを持つ技術者はもちろん、既存のシステムの改善や運用を行う技術者まで、ソフトウェア、ハードウェア両面での人材不足が深刻です。
IT業界での人手不足を解消するには、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方や、デジタル機器を活用した効率的なコミュニケーションといった、働き方改革の推進が必要です。特に企業側はIT分野の担い手となる若年層からデジタル人材を確保・育成するために、若年層のニーズや価値に対応した働き方の実現が求められていると言えるでしょう。
働き方改革による企業の主な取り組みについて
働き方改革が求められる社会的要因や解決できる課題はさまざまあります。企業側は自社の抱える課題や従業員、今後の採用者のニーズに即した働き方改革への取り組みを推進しなければいけません。
以下、その具体的な取り組みについて簡単にまとめてみました。
多様な働き方の導入
従業員の多様な働き方を導入するための取り組みには、以下のものがあります。
- フレックスタイムや在宅ワーク、テレワーク(リモートワーク)など、自由で柔軟な働き方のオプションの導入
- 業務の性質に応じて、従業員が柔軟に勤務時間や場所を選択できる
長時間労働の是正
長時間労働や過重労働の是正への取り組みには、以下のものがあります。
- 業界や企業に応じて労働時間に柔軟性を持たせる
- 適切な労働時間の設定
テクノロジーや業務効率化ツールなどの活用
業務効率化のために、以下のようなツールを導入するのも有効です。
- コミュニケーションツール
- 業務効率向上のためのツール(プロジェクト管理ツール、コラボレーションツールなど)
- リモートワークサポートツール など
同一労働同一賃金の導入
同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を実現する働き方改革の施策のひとつです。たとえば正社員と同じ業務を担当する派遣社員に対して、同等の賃金や待遇を提供します。同一労働同一賃金により、非正規雇用の従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保、生産性の向上などの成果を得ることができます。
同一労働同一賃金の実現とともに重要なのが、派遣社員から正社員への登用ルールの整備です。登用ルールを整備することで、企業は正社員と同様のスキルや能力を持つ人材の確保が実現できるでしょう。従業員側にもキャリアの安定性や待遇向上への期待によるモチベーションの向上や企業への定着といった効果が得られる可能性が高く、企業と従業員両方に利益をもたらすと言えるでしょう。
働き方改革のメリット
働き方改革に関する取り組みを導入することで、企業で働く従業員側にも、雇う企業側にも多くのメリットが得られます。
株式会社ライフワークバランスが実施した「企業の働き方改革に関する実態調査2022年版」では、働き方改革がうまくいっている企業の成果として「業績が向上した」(64.6%)、「従業員満足度が向上した」(63.0%)、「顧客満足度が向上した」(60.5%)、「株価等企業価値が向上した」(59.0%)といった、社員側、企業側両方のメリットが上がっています。
次に、働き方改革でもたらされる、社員側、企業側それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
社員目線のメリット
ライフワークバランスが整う
働き方改革によって短時間労働や在宅勤務といった柔軟な働き方が選択できるようになることで、生活の質の向上やライフワークバランスの改善につながります。
たとえば早朝の満員電車を避けての時差通勤や在宅勤務が実現すれば、通勤ストレスや満員電車から解放されます。業務を効率化するツールを導入すると、業務上での無駄を削減でき長時間労働の是正にもつながり、より働きやすい環境が実現するでしょう。
さらに通勤時間や無駄な労働時間の短縮により、より良いライフスタイルを実現するための時間を確保しやすくなります。たとえば家事や育児、介護と仕事を両立させる、副業や新しいスキルの習得に挑戦する、家族や趣味に時間を充てるなど、従業員一人ひとりのライフワークバランスを整えることも可能です。
企業目線のメリット
生産性の向上
働き方改革を推進することで、生産性の向上が期待できます。たとえば効率化できるツールの導入や残業時間の労働の規制を行うことで、限られた時間内で効率的に業務を進める工夫が必要となります。
集中的に作業を行う、業務の効率化を行うことで今までと同じ時間でより多くの成果を得ることができます。長時間労働の解消は従業員側の労務負担を軽減するだけでなく、企業側の利益にもつながるでしょう。
優秀な人材を雇用できる
働き方改革によって労働環境の改善を図ることは、優秀な人材を確保することにつながります。たとえば長時間労働の強制や残業代がつかないといったブラック企業が社会現象となりました。労働者側は当然ながら待遇面でも職場環境でもより良い企業を求めて、就職活動中からブラック企業を避けるようになります。
- キャリアプランやビジョンが確立している
- ライフワークバランスを重視した働き方ができる
- 能力やスキルに見合った給料が支払われる
といった働きやすい環境が整っている企業は、労働者側からも社員を大切にする企業=ホワイト企業とみなされます。結果的に多くの採用希望者が募りやすくなり、労働人口が減少している中でも限られた、優秀な人材を獲得することにもつながるでしょう。
働き方改革の課題や問題点
働き方改革は従業員側にも企業側にも多くのメリットが得られる一方で、課題や問題点も発生しています。企業の働き方改革推進の障壁にもなっている、働き方改革の課題や問題点を社員側、企業側それぞれで解説します。
社員目線の課題
コミュニケーションの課題
テレワーク(リモートワーク)は時と場所を選ばない働き方として有効である一方、従業員間や部門間のコミュニケーションが対面よりも困難になるといった問題点があります。
厚生労働省が2020年に実施したテレワークに関する企業調査によると、テレワークで感じた課題やデメリットへの質問に対して、企業側全体の45.3%が「社内のコミュニケーションが減った」、労働者側全体の37.7%が「上司・部下・同僚とのコミュニケーションが取れない」と回答しています。
テレワークは画面を通じた連絡のため表情や雰囲気がつかみにくい、社内での気軽な相談や報告がしにくい、といった問題が発生しやすいデメリットがあります。テレワークを介しての円滑なコミュニケーションを図るためには、企業側が適切なコミュニケーション手段やツールを導入するなどの工夫を行う必要があります。
モチベーションの低下
残業の是正や働き方改革を進める際に、体制の整備を怠ると業務量は変わらずに働く時間が制限され、トラブルや休日出勤、持ち帰りでのサービス残業が増加する可能性があります。これにより社員のモチベーションが低下し、逆に生産性が下がる可能性があります。
企業目線の課題
人件費やツール導入などコストがかかる
働き方改革の施策実現には、企業側に多くのコストが発生します。たとえば有給取得の義務化を実現すれば休暇中の賃金支払いが発生します。さらに、有給休暇を取得させた従業員の分の業務を他の従業員が担うこととなり、残業代が増加してしまうこともあるでしょう。また、同一労働同一賃金が義務化されたことで、正社員と契約社員などの労働者間での賃金差がなくなりました。これらの要因により、雇用人数に応じて人件費が増加することになるでしょう。
また働き方改革の実現のために、ツール導入を検討する企業も多いです。ただし、ツールや大規模システムの導入には大きな初期コストやランニングコストが発生します。人件費からソフトウェアまで、働き方改革によって発生する高いコストも、企業の懸念材料のひとつです。
一時的に業績や生産性が下がる
働き方改革による労働時間の見直しによって、一時的な労働生産性の低下を引き起こす可能性があります。たとえば残業をなくすことで残業代が入らず収入が減る、在社時間が短くなる分持ち帰りの仕事が増えてしまう、制度を設けても定着しない、といった理由で従業員のモチベーションが下がってしまい、業務効率や生産性が下がってしまう可能性があるためです。
働き方改革へ取り組む際には、企業ごとに業務内容の見直しや仕組み化による効率化も並行して検討することが重要です。
まとめ
働き方改革の概要や企業の具体的な取り組み、社員側、企業側のメリットや問題点について解説しました。
働き方改革は少子高齢化による人手不足への対応が根本の目的にありますが、自社の課題に即した施策を行うことで、優秀な人材の確保やライフワークバランスの両立など、企業側、従業員側両方にメリットが得られます。
ただし、費用面をはじめとした課題から、働き方改革に着手できなかったり、定着しなかったりといった課題をかかえる企業もあります。そのため、より良く働ける職場環境を求めているときには、転職も選択肢となります。
時間外労働制限や育児・介護中の時短勤務など”プライベート時間を大切にできる働き方”が叶う環境
働き方改革によって残業代が出ず収入が減る、在宅ワークばかりで社内のコミュニケーションが取れない、といった課題も発生することがあります。
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