【人材はコストから投資へ】人的資本経営とは?企業が開示すべき情報は?

昨今、経営戦略や人事の現場において、“人的資本経営”というキーワードが話題になっていますね。

その言葉だけでも良く分からないのに、情報開示しなければならないと言われても、「一体何の情報をどこに開示すればいいの!?」とお困りではないでしょうか。

本記事では今話題の“人的資本経営”についてと、情報開示について分かり易く説明いたします。

【この記事を読むと分かること】

  • ・人的資本経営の背景
  • ・これからやるべき取り組み
  • ・人的資本経営の対応に手が回らない現場の解決策

目次

  1. 人的資本経営(Human Capital Management)とは
  2. 人的資本経営って今までと一体何が違うの!?
  3. 人的資本の情報開示とは?
  4. 企業が開示すべき情報は?
  5. 人的資本経営に頭を悩ませている方へ

1.人的資本経営(Human Capital Management)とは

経済産業省の政策における経済産業の分野に「人的資本経営」という政策があります。

つまり「人的資本経営」とは、国の政策であるということが分かります。

続いて、~人材の価値を最大限に引き出す~というサブタイトルがあり、以下の説明文が明記されています。

「人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。」

出典:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」

そこまで特別なことではないように感じますが、今までとは一体何が違うのでしょうか。

2.人的資本経営って今までと一体何が違うの!?

経済産業省が2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」の中では以下の様に書かれています。

人材は、これまで「人的資源(Human Resource)」と捉えられることが多い。
この表現は、「既に持っているものを使う、今あるものを消費する」ということを含意する。

このため、「人的資源」という捉え方を出発点とすれば、マネジメントの方向性も、「いかにその使用・消費を管理するか」という考え方となり、人材に投じる資金も「費用(コスト)」として捉えられることとなる。

しかし、人材は、教育や研修、また日々の業務等を通じて、成長し価値創造の担い手となる。また、企業が目を配るべき対象は、現在所属している人材だけではない。事業環境の変化、経営戦略の転換に伴い、必要な人材を外部から登用・確保することも当然ありうる。

このため、人材を「人的資本(Human Capital)」として捉え、「状況に応じて必要な人的資本を確保する」という考え方へと転換する必要がある。

こうした捉え方の下では、マネジメントの方向性も「管理」から人材の成長を通じた「価値創造」へと変わり、人材に投じる資金は価値創造に向けた「投資」となる。

出典:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~

要約すると、これまで人材に投じる資金はコストと捉えられていましたが、これからは人材に投じる資金は投資と捉えましょうという考え方です。

Human Resourceを略して“HR”と呼んでいましたが、今後は“HC”と呼ばれる時代が来るのかもしれません。

「人材版伊藤レポート」では、各社が持続可能な企業価値の向上に向け、人材戦略について“変革の必要性”があるとして、その変革の方向性を次の図の様に分かり易くまとめられています。

■ 変革の方向性

変革の方向性について

出典:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~

これからこの様な考え方で経営戦略が策定されるのであれば、企業は人材に対して“コストは出来るだけ抑える”ではなく、“企業価値向上のために投資する”という考え方にシフトすると考えられます。

自分自身を商品として企業に売り込んできた全サラリーマンにとっては、コストではなく投資と捉えてもらえることは朗報と言えるのではないでしょうか。

3.人的資本の情報開示とは?

内閣官房が2022年6月に公開した「人的資本可視化指針(案)」では、“人的資本の可視化”つまりは情報開示の背景について以下の様に説明しています。

■ 人的資本の可視化へ高まる期待

  • ・競争優位の源泉や持続的な企業価値向上の推進力は「無形資産」に
  • ・人的資本への投資はその中核要素であり、社会のサステナビリティと企業の成長・収益力の両立を図る「サステナビリティ経営」の重要要素
  • ・今や多くの投資家が、人材戦略に関する「経営者からの説明」を期待
  • ・経営者、投資家、そして社員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため、「人的資本の可視化」が不可欠

出典:内閣官房ホームページ「「人的資本可視化指針」(案)に対するパブリックコメントの結果の公示及び同指針の策定について」

要約すると、現代社会で企業として生き残っていくには無形資産、つまり人材が重要になったので、多くの投資家が人材戦略について経営者に説明を期待している。

だから経営者・投資家・社員などのステークホルダーがきちんと人材という資本についての情報を見える様にしておきましょう、ということです。

4.企業が開示すべき情報は?

人的資本の可視化は義務付けられているのでしょうか、それとも努力目標なのでしょうか。

令和5年1月31日に金融庁公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正によって、令和5年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書には以下の事項の記載が義務化されました。

■ 人的資本、多様性に関する開示

(開示府令第二号様式 記載上の注意「(29) 従業員の状況」、「(30-2)サステナビリティに関する考え方及び取組」及び開示ガイドライン)

人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針及び当該方針に関する指標の内容等について、必須記載事項として、サステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」と「指標及び目標」において記載を求めることとします。

また、女性活躍推進法等に基づき、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」を公表している会社及びその連結子会社に対して、これらの指標を有価証券報告書等においても記載を求めることとします。

なお、これらの指標を記載するに当たって、任意で追加的な情報を記載することが可能であること、サステナビリティ記載欄の「指標及び目標」における実績値に、これらの指標の記載は不要であることを明確化することとします。

出典:金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について」

人的資本、多様性に関する開示は、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」の一環とされています。

有価証券報告書を提出する義務がある上場企業では、必然的に人的資本の開示が義務化されるということになります。

大企業が今後この様な取り組みを行っていくということは、日本の社会全体にとって大きな影響を与えることは間違いないでしょう。

5.人的資本経営に頭を悩ませている方へ

人的資本経営の取り組みは非常に素晴らしいものでありますが、一方で新しい取り組みを行う経営者や人事担当者にとっては、大きな悩みの種となっているかもしれません。

人手不足が続く中で現場からは人材の早急な手配を求められ、また一方では国から人事制度の刷新を求められているという状況の中で、大手企業の人事担当の方は慌ただしい日々を送っていることが予想されます。

ここからは当社の宣伝にもなってしまいますが、その様な課題の解決方法として、人材のアウトソーシングは非常に有効な手段になります。

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今回は今話題の人的資本経営について、出来るだけ分かり易く解説いたしました。

少しでも皆様の業務の助けになれば幸いです。

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