仕事と家庭との両立がスタンダードな考え方として浸透してきている昨今、雇用形態に問わず産休・育休の制度は整ってきています。
しかし、派遣社員として働く場合、産休を取ることができるのか、また産休をとれる場合はどのようにして手続きをしていったらいいか、詳しく知らない人は多いのではないでしょうか。
この記事では派遣社員が産休をとる場合に必要な、派遣社員の産休制度・育休制度について、具体的にどのような制度が整っているのか、解説します。
産休を取得するための条件をはじめ、期間中の給与や注意点などを整理していきます。今後産休の利用を検討している方や事前に確認しておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事を読むと分かること】
- ・派遣社員が産休・育休を取るための条件
- ・派遣社員によくある産休の細かいルール
- ・派遣社員の育休中の給与について
目次
派遣社員は産休を取ることはできる?
派遣社員の場合、実際に産休を取ることはできるのか、
結論から言うと、派遣社員でも問題なく産休・育休を取得することができます。
産休や育休は正社員だけが取得できる制度ではなく、どのような雇用形態でも取得可能です。つまり、派遣社員であっても、仕事を辞めずに出産や育児に専念することができるでしょう。そのため、休んでいる間のお金の面や仕事に復帰後の心配が少なく、安心して出産や育児が可能です。
派遣社員が産休・育休を取得するための条件とは
派遣社員の産休や育休取得の権利は法律で定められていて、必要な手続きを行えば平等に取得することができます。ここからは、派遣社員が産休・育休を取得する条件として、次の2点を解説します。
- (1)法律上の権利
- (2)必要な書類と申請手続き
2点について詳しく確認していきましょう。
(1)法律上の権利
派遣社員にも正社員と同様に、産前産後休業である「産休」、また育児を行うための休業「育休」を取得する権利があります。女性は産休・育休を取得できて、男性は育休のみ取得可能です。
2005年4月の育児・介護休業法の改正により、有期雇用者である派遣社員が取得対象となり、さらに育児休業期間の延長がなされました。また2017年1月の改正により、有期雇用者の取得条件の緩和や、育児の対象となる家族の範囲拡大などが行われています。このように、多様化する雇用形態や家族形態に沿って法律が改正されています。
(2)必要な書類と申請手続き
派遣社員が産休や育休を取得するには、事前に必要書類の提出を行うなどの申請手続きが必要です。
産休・育休の取得申請を行う場合、派遣会社の制度を利用するため、派遣先の企業ではなく、まずは派遣元である派遣会社へ連絡しましょう。
細かいルールは利用する派遣会社によって異なりますが、基本的に取得を希望する1ヶ月前までには申請を行う必要があります。出産後の育休についても、同時に申請することになります。さらに休暇申請の他にも、収入保証や出産一時金などの費用申請もまとめて行う必要があります。
【知らないと損する?】派遣社員の産休手続きガイド
ここからは派遣会社の産休・育休の手続きガイドとして、以下の3点について解説します。
- (1)産前休業と産後休業の期間
- (2)女性の育休取得可能期間
- (3)男性の育休取得可能期間
- (4)分割取得と延長条件
産休や育休の概要を事前に把握して、利用する時のために備えておきましょう。
(1)産前休業と産後休業の期間
産前休業と産後休業の期間は、派遣会社のルールや妊婦・子どもの条件によって異なります。法律で定められた産前休業と産後休業の期間は、以下の通りです。
休暇期間 | |
---|---|
産前 | 6週間(双子や三つ子の場合は14週間) |
産後 | 8週間(6週間まで就業できない) |
産前休暇を取得した場合、6週間が就業できない期間として定められています。そして産後については、6週間が女性が申請しなくとも休業しなければならない期間として定められています。ただし6週間以降は医師から支障がないと認められた際は、仕事に復帰することが許されています。
(2)女性の育休取得可能期間
女性の場合、派遣社員の育休は産後休業が終了した後9週目から取得可能で、基本的には子どもが1歳になるまで取得可能となっています。
(3)男性の育休取得可能期間
男性の育休取得可能期間は、配偶者の出産予定日または子どもの出生日のいずれか早い日から子どもが1歳になるまで取得可能です。
男性の育休取得可能期間の具体例は、以下の通りです。
<男性の育休取得可能期間の例>
育休取得開始日 | 出産予定日 | 実際の出生日 | 男性の育休取得可能期間 |
---|---|---|---|
出産予定日より後に子が出生した場合 | 2024年10月1日 | 2024年10月5日 | 2024年10月1日~ 2025年10月4日までの期間 |
出産予定日より前に子が出生した場合 | 2024年1月1日 | 2023年12月28日 | 2023年12月28日~ 2024年12月27日までの期間 |
この表は、出産予定日を基準とした場合と、実際の出生日を基準とした場合の育休取得可能期間を比較したものです。
出産予定日と出生日の兼ね合いによって、取得可能期間が少しずつ異なります。
どちらの場合でも、基本的には出生日の翌日から育休を開始し、子が1歳に達する前日まで育休を取得することが原則となります。
(4)分割取得と延長条件
2022年10月に施行された育児・介護休業法の改正により、育休を分割して取得することができるようになりました。勤務先の業務事情から短い期間しか取得できないケースや、配偶者と交互に育児休暇を取りたいケースなどに対応するためで、育休開始日を柔軟化させるために改正されました。
また、育休の期間は、基本的には子どもが1歳になるまでとされていますが、保育所への入所が決まらない場合、1歳6ヶ月または2歳まで期間を延長することができます。
ただし保育所への申し込みを行っていない場合や、職場からの連絡や面談の場で復職希望がある旨を伝えていない場合は対象外となってしまいます。
派遣社員の産休・育休 こんな場合はとれる?
派遣社員は産休や育休が取得可能であるとは言え、自分が働く環境で本当に取得できるのか不安が残っているかもしれません。そこでここからは、派遣社員の産休・育休が取れるのか、以下2つの具体例をあげて紹介していきます。
- (1)派遣1年未満の場合
- (2)派遣社員で3ヶ月更新の場合
自分が対象となるケースがあるのかご確認ください。
(1)派遣1年未満の場合
派遣社員として働いている期間が1年未満の場合であっても、産休や育休を取得することができます。産休・育休の取得に労働期間は関係なく、出産予定日の6週間前に雇用契約があれば誰でも申請可能です。ただし労使協定を締結している場合、1年未満の派遣社員は取得できない可能性があります。気になる方は派遣会社に確認しましょう。
(2)派遣社員で3ヶ月更新の場合
派遣契約が3ヶ月更新の方であっても、産休や育休の取得が可能です。取得条件は産休・育休の申し出を行う時点で「労働契約の更新をしない」旨を明らかにしていないことです。つまり更新しないと伝えられていない段階であれば、産休・育休の申請が可能といえるでしょう。
派遣社員の産休・育休手当と給与について
産休・育休の取得と同様に、派遣社員を含む全ての雇用形態で、産休手当・育休手当の申請が可能です。ここからは派遣社員の産休手当・育休手当と給与について、以下の3点から詳しく解説します。
- (1)産休中の手当
- (2)育休中の給与
- (3)給付金の詳細計算
手当を受け取るには申請が必要となります。事前に1つずつ確認しておきましょう。
(1)産休中の手当
健康保険に加入していれば、産休中に「出産手当金」を受け取ることができます。産前6週から産後8週までの間で、給料が支払われなかった日数に対して、都道府県ごとに定められている標準報酬日額の3分の2に相当する額を受け取れます。
また他にも出産した場合「出産育児一時金」として、1児につき50万円を受け取ることができます。出産育児一時金は健康保険に加入している本人以外にも、被扶養者や国民健康保険に加入する方にも支給されます。
(2)育休中の給与
雇用保険に加入している派遣社員の場合、育休中の給与にあたる「育児休業給付金」を受け取れます。育休開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。
育児休業給付金を受け取るためには、育休を取得した被保険者である必要があります。さらに育休開始日前の賃金基礎日数や、支払期間中の就業日数の制限などが定められています。
(3)給付金の詳細計算
産休中に受け取れる出産手当金の計算方法として、まずは標準報酬月額を30日で割った標準報酬日額を算出します。算出した標準報酬日額の3分の2相当額が健康保険より支給されます。
そもそも標準報酬月額とは、毎月の給料を区切りの良い幅で区分した数値で、第1級の58,000円から第50級の139万円まで全50等級に区分されています。都道府県ごとに少しずつ数値が異なります。
派遣社員が産休・育休を取得する際の注意点とは
ここからは派遣社員が産休や育休を取得する際の注意点として、以下の3点を紹介していきます。
- (1)職場復帰の手続き
- (2)派遣元と派遣先との調整
- (3)取得中の働き方の制限
損してしまわないように、事前にポイントを確認しておきましょう。
(1)職場復帰の手続き
産休や育休の目途が立ったら、職場復帰の手続きを行い、派遣会社や派遣先企業に、なるべく早く復帰の意志を伝える様に心掛けましょう。復帰する際は働く企業や部署の調整、子どもの預け先の確保、社会保険料の免除期間日程の調整などが必要です。こうした復帰への連絡を早めに伝えておかないと、復帰まで時間がかかってしまう可能性があります。
さらに、復帰後に同じ部署で同じ仕事ができるとは限りません。他の企業で働くことになるかもしれないので、どういった形で復帰するかもよく相談しておきましょう。
(2)派遣元と派遣先との調整
産休や育休から復職する際、派遣会社である派遣元と派遣先企業との調整を行う必要があります。派遣先企業が強化したいポジション、人員の空きが出たポジションなどに応じて、派遣社員が募集されるからです。
まずは、仲介役になる派遣会社と連絡を取り、指示に従ってやり取りを行いましょう。
復帰前に業務内容や勤務時間などについて、気になる点があれば躊躇せずに質問しておきましょう。派遣先企業に直接言いにくいことがあれば、派遣会社の担当者へ連絡してみても良いかもしれません。
(3)産前・産後休業中の労働時間と業務内容の制限
過度な負担の回避
産前・産後休業中、特に産後休業から復職する場合、労働者に過度な負担がかかる業務を任せてはなりません。具体的には、長時間労働や夜勤、重労働、高温や低温の環境での作業などが含まれます。
適応業務の提供
企業は、産前・産後休業中の労働者に対して、健康状態を考慮した適切な業務を提供する義務があります。例えば、座り仕事や軽作業への配置転換が考えられます。
派遣社員が産休・育休を取った後のキャリアとは
ここからは派遣社員が産休や育休を取得した後のキャリアについて、以下の3点を整理していきます。
- (1)復職の流れ
- (2)キャリア形成の支援制度
- (3)スムーズな職場復帰のコツ
1つずつ確認していきましょう。
(1)復職の流れ
派遣社員が復職する時の流れとして、まずは派遣会社の担当者へ連絡します。
具体的に働く日数や業務内容について面談を行った後に、必要書類を提出します。職場復帰後には、短時間勤務や子どもの育児目的休暇のように子どもの年齢によって利用できる制度があるので、利用を検討してみてください。
しかし、職場復帰の意志を伝えれば、すぐに職場に戻れるとは限りません。復帰が見えてきた段階で、一度派遣会社の担当者に相談してみても良いかもしれません。
(2)キャリア形成の支援制度
派遣社員が産休や育休を経て仕事に復帰した際、キャリア形成の支援制度を積極的に活用しましょう。派遣会社が主催する研修制度は、近年整ってきています。
例えばアウトソーシングテクノロジーの場合、管理職や営業担当者に向けた法改正や制度理解、マネジメントスキル向上を目的としたセミナーの開催や、復職後の配属先の選択肢を増やす制度の拡充を行っています。
オンラインで受講可能な社内研修が豊富に用意されているので、それらを活用して職場復帰後のキャリア形成に活かすことが出来ます。
他にも多くの派遣会社で職場復帰しやすい環境作りがされてきています。
(3)スムーズな職場復帰のコツ
派遣社員がスムーズに職場復帰するコツは、無理なく働ける計画を立てることです。
始業・終業時刻や労働時間が決められる「フレックスタイム制」や時短勤務活用の選択肢を入れてみましょう。
仕事と子育てを両立するために、他にも休暇制度を活用したり時間外勤務を制限したりすることもできます。
試してみないと分からない部分があるので、不安や疑問があれば都度派遣会社や派遣先企業へ相談しましょう。
女性の産休・育休取得率99%のアウトソーシングテクノロジー
派遣社員は産休・育休が取得できる上に、手続きをすれば「出産手当金」や「出産一時金」「育児休業給付金」などを受給可能です。派遣社員であっても、産休や育休が取得しやすい環境が年々整ってきています。
当社アウトソーシングテクノロジーは、女性の産休・育休取得率が99%、男性の育休取得率が53.6%と高水準となっています(2023年12月時点)。多くの方が取得している事例があり、より職場復帰がしやすい環境です。
仕事も育児も両立させたい方は、ぜひアウトソーシングテクノロジーへの入社を検討してみてください。ご相談お待ちしています。