派遣社員は有給休暇がもらえるの?1年で何日?金額はいくら?取得条件や申請方法を徹底ガイド
2024.10.24
派遣社員として働く際に、「派遣社員は有給休暇が発生するのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?
正社員とくらべると、有給休暇の取得日数や金額に違いがあると感じることがあるかもしれません。申請方法や条件が明確でないと、どうすればいいか不安になりますよね。
派遣社員も一定期間働けば有給休暇が発生しますが、申請時によくあるトラブルとそれを避けるための対処法を知っておくと、有給休暇を取得しやすくなることがあります。
そこで、この記事では派遣社員の有給休暇の概要をはじめ、よくあるトラブルや賢い取得方法などを整理していきます。派遣社員に興味がある方や有給休暇について詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
【この記事を読むと分かること】
- ・派遣社員の有給休暇の取得条件と日数
- ・有給休暇の申請方法と注意点
- ・よくあるトラブルと対処法
- ・賢い有給休暇の取得方法
目次
派遣社員は有給休暇がもらえるの?
派遣社員として働くイメージが湧かず「派遣社員は有給休暇がもらえるの?」と不安を抱える方がいるかもしれません。結論から言うと、派遣社員にも有給休暇は付与されます。派遣社員は正社員やパートと同様に、有給休暇の付与が法律で定められているためです。
派遣社員に有給休暇が発生することを踏まえて、ここからは以下の4点を詳しく解説します。
- 有給休暇は1年で何日もらえる?
- 派遣社員はいつから有給休暇を申請できる?
- 派遣社員の有給休暇でもらえる金額とは
- 派遣社員の有給休暇中の給料どこが払うの?
本章で有給休暇への理解を深めていきましょう。
有給休暇は1年で何日もらえる?
有給休暇は次の2つの条件を満たせば取得することができます。
- ・6か月間継続勤務
- ・出勤率が8割以上
つまり、勤続6か月が経ち、出勤率が8割以上であれば有給休暇の取得が可能です。
まず、最初に10日間付与されます。
その後、勤続年数に応じて1年ごとに+1日、さらに数年後には+2日ずつ増加します。
具体的には、2年目は12日、3年目は14日…と増え、6年半以上勤務すれば20日間が最大付与されます。
継続勤務年数 | 6か月 | 1年 6か月 |
2年 6か月 |
3年 6か月 |
4年 6か月 |
5年 6か月 |
6年 6か月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
さらに、所定労働日数が少ない労働者については、以下のようなルールに基づいて有給休暇が付与されます。
週所定 労働日数 |
1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6か月 | 1年 6か月 |
2年 6か月 |
3年 6か月 |
4年 6か月 |
5年 6か月 |
6年 6か月以上 |
|||
4日 | 169日~216日 | 付 与 日 数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
所定労働日数が少ない労働者とは、次の2点の条件に当てはまる方が対象になります。
- ・所定労働時間が週30時間未満であること
- ・週の所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216日以下であること
例えば、
- 週4日勤務の場合:最初に付与される有給休暇は7日間
- 週3日勤務の場合:最初に付与される有給休暇は5日間
など、勤務日数に応じた日数が付与されます。
派遣社員はいつから有給休暇を申請できる?
有給休暇は、正社員、派遣社員、パートなどの雇用形態を問わず、取得する権利があることが労働基準法で定められています。
継続勤務日数6か月が経ち付与された後であれば、いつでも申請・取得する権利があります。
有給休暇の取得には事前の手続きが必要であるため、派遣元企業や派遣先企業の指示に従いましょう。また取得する際は、派遣先企業を不在にすることになるので、同僚と休みが被らないことや繁忙期を回避することを心掛けると良いでしょう。
有給休暇を取得する上で注意すべき点として、2019年4月より、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得する義務が設けられました。自身の健康管理やリフレッシュのために計画的にしっかり取得することも重要だということです。
派遣社員の有給休暇でもらえる金額とは
派遣社員が有給休暇を取得した際、労働基準法で定められた計算方法による賃金を受け取れます。計算方法は「通常賃金」「平均賃金」「標準報酬日額」の3種類があります。
計算方法 | 概要 |
---|---|
通常賃金 | 通常の勤務日に働いた場合に支払われる賃金(労働者に最も有利) |
平均賃金 | 過去3か月の給与合計額から算出(最低でも平均報酬の60%以上受け取れる) |
標準報酬日額 | 社会保険料の計算の基準に使われる金額(労働者に不利に働きやすい) |
どの計算方法を用いているかは、派遣元企業により異なります。気になる方は契約書を確認するか、派遣元企業の担当者へ問い合わせてみてください。
派遣社員の有給休暇中の給料 どこが払うの?
派遣社員が有給休暇を取得した際の給料は、派遣元企業が支払います。そもそも、派遣社員と雇用契約を結んでいるのは派遣元企業なので、給料の支払いや有給休暇の付与は派遣元企業が行います。したがって有給休暇中の給料も、派遣元企業から支払われます。
ただし、有給休暇を取得する際は、まず相談を派遣先企業へ行い、申請は派遣元企業に行う必要があります。相談を派遣先にする理由は、派遣社員が実際に働く場所は派遣先企業なので、周りの人への配慮や業務調整を行う必要があるからです。
派遣社員の有給休暇申請でよくあるトラブルと対処法
派遣社員の有給休暇申請時に起きるトラブルについて、事前に把握しておけば落ち着いて対処できます。そこで、ここからは有給休暇の申請でよくあるトラブルと対処法について、以下の6点を解説します。
- (1)派遣元企業や派遣先企業から有給休暇はないと言われた
- (2)有給休暇の申請方法がわかりにくい
- (3)有給休暇取得時の賃金支払いの遅れや不足
- (4)派遣先企業が変わった際、有給休暇が引き継がれない
- (5)有給休暇取得後に不当な扱いを受けることがある
- (6)派遣元企業と派遣先企業の責任が曖昧
もっと早く知っておけば良かったと後悔しないように事前に読んでおきましょう。
(1)派遣元企業や派遣先企業から有給休暇はないと言われた
派遣元企業や派遣先企業から、有給休暇がないと言われたり、取得を拒否されることがあるかもしれません。
派遣先企業での業務都合や人手不足などが理由でしょう。しかし、忙しいことを理由に、有給休暇の取得を拒否することは法律上認められていません。もし、派遣元企業や派遣先企業と話し合っても有給休暇が取得できない場合、法的な支援を求める方法があります。
有給休暇を付与した日から1年以内に5日間取得することが法律で定められており、企業がこのルールに反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。
最終手段として、労働組合や労働相談機関に相談することを選択肢に入れておくと安心です。
(2)有給休暇申請方法がわかりにくい
派遣社員が有給休暇を取得する際、申請方法がわかりにくいことがあるかもしれません。派遣社員は「派遣元企業」と「派遣先企業」の2社と関わっているため、申請プロセスが複雑になっている可能性があります。
有給休暇は派遣元企業から付与されるため、取得申請も派遣元企業へ行わなければなりません。ただ実際に働いているのは派遣先企業なので、同じ部署の同僚や上司などに取得を報告する必要があります。派遣先企業によって有給休暇取得時の流れやルールがあるため、取得する際に確認しましょう。
(3)有給休暇取得時の賃金支払いの遅れや不足
派遣社員が有給休暇を取得した際、賃金の支払い遅れや、金額間違いなどが発生する可能性があります。ヒューマンエラーやシステムエラーなどにより、ミスが発生してしまうかもしれません。
おかしいと感じた時は、まずは派遣元企業との契約内容を確認して、有給休暇取得時の賃金はどのように支払うルールになっているのか再度チェックしてみましょう。契約内容と異なる金額が支払われている場合、派遣元企業に問い合わせる必要があります。支払いを行うのは派遣元企業のため、まずは派遣元企業の担当者へ間違っていた旨を相談しましょう。
(4)派遣先企業が変わった際、有給休暇が引き継がれない
派遣先企業が変わった時に、有給休暇が引き継がれないトラブルが発生するかもしれません。通常、同じ派遣元企業に所属した状態で別の派遣先企業で働くことになった場合、有給休暇は引き継ぐことができます。新しい派遣先企業で新たに6か月間働かなくても、有給休暇を利用することができるルールになっています。
ただし、有給休暇の引継ぎは「1か月以上間隔を空けないこと」と「1か月以上連続勤務すること」が条件になります。思いもよらないタイミングで有給休暇が消失している場合は、派遣元企業に問い合わせてみましょう。万が一、派遣元企業の事務ミスや管理不足により有給休暇がリセットされていたら、早めに対処する必要があります。
(5)有給休暇取得後の不当な扱いを受けることがある
派遣社員が有給休暇を取得することで、不当な扱いを受ける職場があるようです。有給休暇取得後に仕事の配置が変わる、給料が減額される、派遣契約が終了になるなどの報復的な行為が発生する可能性がまれにあるのです。しかし、このような不当な扱いをするのは、労働基準法に触れる可能性があります。ひどい対応をされた時は、労働組合や外部機関に相談してみましょう。
ただし、有給休暇はいつでも取得する権利がある一方で、取得時は社会人としてのマナーも心がけましょう。例えば、「繁忙期の取得はなるべく避ける」「上司や同僚への引継ぎを忘れずに行う」といった配慮も大切です。
派遣社員の賢い有給休暇の取り方とは
ここからは派遣社員の賢い有給休暇の取り方を、以下の7点から紹介していきます。
- (1)計画的に有給休暇を消化する
- (2)早めに申請する
- (3)周囲とのコミュニケーションを大切にする
- (4)有給休暇を分散して取得する
- (5)派遣元企業とのルールを確認する
- (6)有給休暇の権利を理解しておく
- (7)連休と組み合わせる
快適に有給休暇を取得するために、ぜひ確認しておきましょう。
(1)計画的に有給休暇を消化する
有給休暇を無駄にしないために、計画的に取得することをおすすめします。繁忙期の取得や同僚との有給休暇の被りを避けるためには、取得日を計画しておくと良いでしょう。また、付与された有給休暇は2年で消滅してしまうため、消滅時期を把握しておくことも大切です。
厚生労働省によると、2023年の有給休暇平均取得率は62.1%です。2022年の58.3%から3.8%伸びているものの、決して取得率が高いとは言えません。日本の有給休暇取得率は、世界的に見ると低水準と言われています。有給休暇取得に罪悪感がある方がいたり、人手不足であることが理由です。
政府が有給休暇の取得が必須とされる制度を整えたり、社会保険制度を完備したりすることをきっかけに、企業意識の変化に期待したいところです。
(2)早めに申請する
有給休暇を取得する日が決まったら、派遣元企業や派遣先企業に早めに申請することをおすすめします。早めの申請により、同僚と有給休暇が被ることを防ぐことができ、事前に業務調整もしやすくなります。
有給休暇を取得する日の直前に申請すると、同僚や上司に良くない印象を与えてしまう可能性があります。周りの人に迷惑をかけず、自分が働きやすい環境を維持するためにも、早めの申請をおすすめします。
(3)周囲とのコミュニケーションを大切にする
有給休暇を取得しやすくするためには、周囲とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
日常的に上司や同僚とコミュニケーションを取っていれば、有給休暇の申請がスムーズに進むでしょう。コミュニケーションを図ることは、有給休暇の取得に限らず、快適に職場で働くために大切なことといえるでしょう。
また、繁忙期やプロジェクトが進行中の場合、事前に相談して業務調整することで、上司や同僚からの理解が得やすくなります。
(4)有給休暇を分散して取得する
有給休暇は分散して取得すると、業務への影響を最小限に抑えられます。
まとめて取得すると業務がたまってしまい、出社した日のスケジュールが厳しくなるなど、周りの人に迷惑をかけてしまう可能性があります。
一般的に有給休暇は年間10日程度付与されるため、例えば月1回ずつ取得するようにすると良いでしょう。分散して有給休暇を取得することで、リフレッシュの機会を定期的に設けることができます。用事がある日に休むと捉えずに、体を休める日として取得するのもひとつの手です。
(5)派遣元企業とのルールを確認する
派遣元企業によって、有給休暇の申請や取得のルールが異なる可能性があります。申請方法や取得条件を最初にきちんと確認しておけば、後でトラブルになることがありません。
また、新しい派遣先企業で働く時には、取得の流れを上司や同僚に確認しておきましょう。
事務的なことはもちろんですが、気持ちよく有給休暇を取得するために、部署でのルールに沿って取得することが大切です。
(6)有給休暇の権利を理解しておく
正社員だけでなく、派遣社員にも有給休暇を取得する権利があることを理解しておくことが大切です。
正社員や契約社員、派遣社員などの雇用形態に関係なく、働くすべての人に有給休暇を取得する権利があり、これは労働基準法で定められています。そのため万が一派遣元企業や派遣先企業に有給休暇の取得を拒否されても、従う必要はありません。
有給休暇の取得に罪悪感を覚える必要はありません。業務調整や相談は必要ですが、堂々と取得して良いものだということを念頭に置いておきましょう。
(7)連休と組み合わせる
有給休暇と祝日を組み合わせると、長期休暇が取りやすくなります。
例えば金曜日・土曜日・日曜日が休みの場合、月曜日に有給休暇を取得することで、4連休になります。
こうした工夫をすると、有給休暇をまとめてたくさん取得したり、周りの目を気にせずに、連休を取ることができるでしょう。
まとまった休みを活用して、日頃は行けない場所に出かけたり県外の知人を訪れたり、何もしない休日を過ごしても良いでしょう。
長期連休は仕事から離れ、体や心を休める良い機会になります。
派遣社員の有給休暇は当然の権利!計画的な申請を
派遣社員に問わず、労働者の有給休暇の取得は当然の権利です。
労働基準法では、年5日の休暇を取得することが義務付けられ、有給休暇を取得する環境は少しずつ整ってきています。有給休暇の取得は躊躇せず、積極的に取得することをおすすめします。
もし取得のルールが分かりにくい場合、派遣元企業や派遣先企業に尋ねてみましょう。有給休暇の付与、取得日の給料についておかしな点を見つけた際には、労働組合や労働相談機関に相談できることを覚えておきましょう。
有給休暇は付与された日から2年が経つと消滅してしまいます。「消滅前にまとめて取得するしかなくなった」「繁忙期にしか取れなくなった」ということがないように、計画的に申請することを心がけましょう。
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派遣社員の有給休暇は、6か月間働けば取得の権利が与えられます。働き方の多様化が進み、雇用形態にこだわらない労働者が増えてきています。そのような状況の中で、派遣社員にも働きやすい環境が整いつつあります。
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